「本当の戦争の話をしよう‐世界の対立を仕切る‐」伊勢崎賢治

こんにちは。

今日は安全保障や国際協力に関する本を紹介します。トランプ氏の発言や、沖縄での事件などアメリカ軍の問題がクローズアップされています。

そんな近況を踏まえて勝手に本の紹介No31です。

人に勧められて手に取った一冊。国際NGO国連の職員として、いくつもの戦争(紛争)へ携わった著者が「リアル」な戦争について高校生へ講義した内容をまとめたもの。内容が難しく、自分なりに上手くまとめられない(^^;)ただ、普段のニュースではなかなか知ることのできない話が多く、世界平和から日本の自衛隊の話(9条の話)、日本の国際協力の在り方まで幅広い話題を扱っている。考えさせられることが多いので、機会があれば一読してもらいたい。
【構成】
著者と高校生との対話形式となっている。最初に日本を取り巻く環境について。
第1章は「もしもビンラディンが新宿歌舞伎町で殺害されたら」という題目で、「国の主権」や「テロリストの人権」について書かれている。
第2章は「戦争はすべて、セキュリタイゼーションで起こる」という題目で、戦争がつくられていく(国民の支える民意をつくる)過程でのセキュリタイゼーションと脱セキュリタイゼーションについて述べられている。(セキュリタイゼーションとは安全保障における「攻撃してくる主体」「それによる犠牲」「国民の承認」これらが結ぶつく一連のプロセス」
第3章は「もしも自衛隊が海外で民間人を殺してしまったら」という題目で、国連の内情や自衛隊の在り方が議論されます。
第4章は「戦争が終わっても」という題目で、戦争後に国が復興していく難しさについて書かれている。
第5章は「対立を仕切る」という題目で、今後日本の国際協力の在り方と、変化する国際情勢について記載されている。
また、イラクパキスタン等を含む中東)、東ティモールシエラレオネスリランカカシミール〈インド)などの現場の話が随時紹介されている。

【感想】
この本を読むと、戦争や安全保障を取り巻く環境の多様性を感じずにはいられない。たくさんの利害関係者(国であり、大企業であり、地元の地権者など)が、立場や状況によって意見を変え、人々を翻弄して行く。誰もが納得する正解は無い中、どこが終着点なのか?本当に世界は平和を求めているのだろうか?(世界が本当に平和になったら、軍人は失業し、軍事産業は成り立たない)「日本で自爆テロが起こる」などはいつ起きてもおかしくない。平和な日本に暮らしていると、戦争は非日常のような話だが、常にそのリスクと隣合わせであることを自覚したい。
本書を読む中で気になった部分として、イラクのアダム・フセインの銅像が倒される話。TVで見ていると盛大にイラク国民が喜んでいるみたいだが、実際には倒れた銅像周辺の一部の人々しか喜んでおらず、どういう角度で報道されるかによって物事は見方が変わる。言われると当たり前だが、日ごろから意識しておきたい。また、「戦争の嘘(アーサー・ポンソンビ-著)」という本から紹介されている戦争のプロパガンダはとても興味深い。